KAMIJO × 山岡晃 × 新英幸 スペシャル対談
ゲームに登場する中ボス「JIN-DIE」とのバトルシーンで使用されている楽曲『Battle of the Tower -16-』を作曲したKAMIJOさんをゲストに迎え、『LET IT DIE』サウンドディレクターの山岡晃、 ディレクターの新英幸の3人に話を訊いた。
Text:細淵真理夫
- —— KAMIJOさんのニューシングル『カストラート』のリリースイベントに山岡さんと新さんがトークゲストとして参加なされたんですよね。
KAMIJO:楽しかったですね。僕のファンのみなさんに『LET IT DIE』のことを知っていただくよい機会になりました。
- —— KAMIJOさんから見た、山岡さんと新さんの印象を聞かせていただけますか?
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KAMIJO:お二人とも、非常にバンドマンぽい感覚をお持ちだと感じました。お互いクリエイターなので、取っ付きやすさはありました。
山岡晃(以降山岡):それは良かったです(笑)。
KAMIJO:同属性感をすごく感じました。
- —— 聞いた話によると、山岡さんとKAMIJOさんは初見からかなり、音楽の技術的な話で盛り上がったとか。
山岡:そうです、そうです。かなりつっこんだ音楽ソフトのマニアックな話になりまして。
- —— 新さんは今日がKAMIJOさんと初対面だったんですよね?
新英幸(以降新):はい、そうです。今回KAMIJOさんとお会いすることになって、確たる世界観をお持ちになっている方だったので正直、会うのが少し怖いなって……。
KAMIJO:いや、いや、僕の方こそ、恐かったですよ。だって、『LET IT DIE』を作った方ですよ。どんな殺人鬼が現れるのかと。
一同:(爆笑)。
- —— 今回KAMIJOさんが音楽制作で『LET IT DIE』に参加なさる経緯について教えてください。
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KAMIJO:最初は山岡さんから“LET IT DIE”というタイトルで楽曲提供をして欲しいというお話しだったんですね。ただ、僕はサウンドトラックの制作もできるので、“ぜひ、ゲーム中に流れるBGMの制作をさせて下さい”と逆にリクエストさせていただきました。
山岡:今回は国内のアーティストに“LET IT DIE”をテーマに楽曲を提供していただいていますが、KAMIJOさんから提案をいただいて、ボスキャラ(JIN-DIE)と戦うシーンのサウンドトラックをお願いしました。
- —— 実際、制作を始めるにあたって、KAMIJOさんが留意したことはありましたか?
KAMIJO:山岡さんから一発、球を投げていただいたんで、僕はこれを100発にして打ち返さないといけないと思いまして(笑)。
- —— 山岡さんは、100発打ち返された感じはしましたか?
山岡:Versaillesを通して KAMIJOさんのサウンドに関しては認識していたんですが、今回制作していただいたサウンドトラックはその、イメージとはまた違ったものだったので、100発打ち返された感じは十分しました。
- —— この『LET IT DIE』では100の楽曲が国内のアーティストから提供されていますが、これは制作当初からあったアイデアなのですか?
新:ゲームをどう面白くするかということに関しては僕の仕事ですが、古い付き合いということもあり、音に関しては完全に山岡に任せているんです。ですから今回もゲームの大まかなアイデアを山岡に投げて、音は山岡に完全にお願いしました。
山岡:じつは、最初から100曲を集めようという企画ではなかったんです。僕は20年間以上ゲーム音楽に関わってきましたが、ゲームの変化に比べて、ゲーム音楽自体の変化は緩いように感じていたんです。
- —— そこで“何か新しいことを”ということでこれだけ、たくさんのアーティストに楽曲参加をお願いしたんです。
山岡:今は世界の市場に向けてどうやって、自分たちの音を届けるかを考えている日本のアーティストがたくさんいると思うんですね。YouTube等での配信という方法もありますが、僕が関わってきたゲームの流通に乗せて世界に日本の音楽を届ければいいんじゃないかと思ったんです。
- —— なるほど。ゲームだけではなく、“日本の音楽をいかに世界に向けて発信していくか”といったテーマも山岡さんのなかにはあったんですね。
山岡:CDが売れなくなったりとアーティスト含め音楽業界にいる人たちが“これからどうやって生きていく”と悩んでいると思うんですが、そういった命題に“ゲームを使って世界に日本のアーティストを紹介しよう”というのが僕なりの回答なんです。
- —— そういった意味では、すでに海外でも人気があり、積極的にワールドツアーを行っているKAMIJOさんの参加はまさに適任ではないでしょうか。
KAMIJO:海外でアニメ、ゲームそしてヴィジュアル系というのは日本の文化として認知されていると思うんです。アニメの主題歌をヴィジュアル系のバンドが担当することもありますから。ただ、今回のようにゲームとヴィジュアル系がお互い内容自体が寄り添ってコラボすることって少なかったように思うんです。今回は『LET IT DIE』の音楽をお手伝いさせていただいたので、今後、海外でプロモーションする機会があれば、ぜひお手伝いさせていただきたいです。
- —— 今回の音楽制作にあたってKAMIJOさんが最初に考えたことはなんだったのでしょうか?
KAMIJO:山岡さんにゲーム中の音楽を作らせてくださいと逆提案した時点で、自分らしいものを素で提示させていただければ、納得いただけるかなと思っていました。ただ、ゲームの中で流れる音楽というところは念頭に置いていました。
- —— 具体的にどんな部分でしょうか?
KAMIJO:まず、効果音ですね。たとえば、足音、剣を振りかざす音であるとか、そういう効果音が入るであろうということは予め想定して作曲しました。
山岡:最初にKAMIJOさんと打ち合わせをさせていただいたときに、まず感じたのが“この人は知っているな”ということです。ゲーム音楽を制作するのに使うコンピューターのツールにすごく詳しいんです。“Symphonic Choir”という音源ソフトがあるんですが、ロックバンドをやっている人には馴染みのないソフトなんです。だだ、KAMIJOさんは、このソフトにすごく詳しくて。僕もよく使うソフトなので、制作方法もお互い似ているんじゃないかと思います。
- —— 逆にゲームクリエイターの立場から、ゲームのイメージを構築しているときに、音が鳴っていたりするものなのでしょうか?
新:音まではイメージすることはないですね。ただ、僕は音のプロではないので、理屈は分からないのですが、プレイしてるとゲームと音が完璧にハマって、熱いシーンではより熱く、恐いシーンではより怖くなるときは、確実にありますね。そういった音はゲームをプレイした記憶と共に、ずっと印象に残るんです。今回KAMIJOさんに作っていただいた曲も、すごく印象深いです。KAMIJOさんの曲が流れるときの敵は強敵で、登場したときに流れる音が本当に怖いんです。ただ、ボスを攻撃していて、ボスの体力が減ってきたときに、勇気づけられるようなメロディが流れるんですよ。“もう少しだ、ガンバレ”みたいな。
KAMIJO:多分この部分じゃないですか(といってメロディを口ずさむ)。
新:あっ、そこです、そこ!(笑)。
山岡:わかります、わかります(笑)。
KAMIJO:僕は『○○○』(某アクションロールプレイングゲーム)のオープニングテーマが大好きで、あのゲームは“塔”がゲームの重要なアイテムになっているんですが、『LET IT DIE』で“塔”を登っていくという話をお聞きして、その『○○○』に対抗するつもりで、音を作りました。
山岡:いやぁ、KAMIJOさんから『○○○』の話が出てくるとは……。
KAMIJO:中学生の頃、すごくゲームにハマったんですよ。 たとえば『●●●』(某歴史シミュレーションゲーム)は仲間にした武将を全部ノートに書き出したり、ゲームをやりながら、武力、知力が上がる度にそのパロメーターをメモして……。
一同:ほぉー!
山岡:そんなことをやっている人聞いたことないですよ。相当です。
- —— KAMIJOさんがこれほどゲームをやっていたとは意外です。今回ご自身が制作した音が実際ゲームのなかから聴こえてきたときの印象は?
KAMIJO:じつは、自分の作った曲がゲームのなかで流れたのはこれが2度目なんですよ。
- —— ほぉー、最初の作品は?
KAMIJO:『□□□』(某コミュニケーションゲーム)です。自分で作ったメロディをゲーム中で流すことができるんです。それが最初ですね。
一同:(笑)。
- —— それは、無邪気な思い出ですね(笑)。
KAMIJO:前回は自分だけの世界の話で、アンオフィシャルな話だったので……(笑)。今回は完全にオフィシャルなデビューですね。
- —— では、オフィシャルのデビューした感想を聞かせてください。
KAMIJO:ゲームの世界は、オリジナルな世界ですけれども、その世界を創ることのお手伝いをすることができたことをとても誇りに思います。ありがとうございます。
- —— 新さんは実際ゲームにハマった音を聴いてどうですか?
新:KAMIJOさんの曲が流れるボスキャラとの戦闘シーンは何回も出てくるんですね。しかも、敵が出現する度に、パワーアップしてくるんです。先程もお話しさせていただきましたが、KAMIJOさんの作った音楽は、プレイヤーをすごく勇気付けてくれるんです。あの音がないと心が折れてしまうと思うんです。そこを音が後押ししてくれる。これは大きいですよ。
- —— 今後『LET IT DIE』はさらに、ヴァージョンアップしてゆくとのことですが、KAMIJOさんから今後のヴァージョンアップについてリクエストはありますか?
KAMIJO:今後のヴァージョンアップで「JIN-DIE」がさらに凶悪になるときは、また新たに音楽を作らせてほしいですね。
新:ぜひ!
- —— 最後にKAMIJOさんからメッセージをお願いいたします。
KAMIJO:僕のファンの方、そしてゲームファンの方、『LET IT DIE』で思う存分、暴れてもらって、と同時に僕の音楽も楽しんでいただけると幸いです。みなさんの24時間は我々がいただきます!
プロフィール
KAMIJO
Versaillesのヴォーカリストとして活動するほか、ソロとしても国内外で活動中。
『LET IT DIE』ゲーム本編に登場する中ボス「JIN-DIE」とのバトルシーンで使用されている楽曲『Battle of the Tower -16-』を作曲。